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大阪高等裁判所 平成2年(ラ)201号 判決

抗告人(申請人)

殿水慶太

右代理人弁護士

良原栄三

坂本康文

池内清一郎

相手方(被申請人)

龍神タクシー株式会社

右代表者代表取締役

小川隆次

右代理人弁護士

村上有司

中松村夫

右当事者間の和歌山地方裁判所田辺支部平成二年(ヨ)第五号地位保全等仮処分申請事件について同裁判所が平成二年五月一日にした却下決定に対し、抗告人から抗告の申立があったので、当裁判所は次のとおり決定する。

主文

一  原決定を次のとおり変更する。

二  抗告人と相手方との間において、平成二年一月二一日から平成三年一月二〇日までの間、抗告人が相手方の従業員(臨時雇運転手)たる地位にあることを仮に定める。

三  相手方は、抗告人に対し、平成二年二月から平成三年一月まで、毎月二八日限り、月額一八万一九九七円を仮に支払え。

四  抗告人のその余の申請を却下する。

五  申請費用はすべて相手方の負担とする。

理由

一  本件抗告の趣旨及び理由は別紙記載(略)のとおりである。

二  当裁判所の判断

1  本件事案の概要

本件事案の概要は、原決定の事実及び理由の「第二 事案の概要」に記載のとおりであるから、これを引用する(ただし、原決定二枚目裏六行目の「雇止め(解雇)を(本誌44頁2段17行目)を「解雇」と改め、同じ行の「意思表示(44頁2行18段目)の次に「(以下、「本件更新拒絶」という。)」を加え、一〇行目の「雇止め」(44頁2段21行目)を「更新拒絶」と改める。)。

2  本件雇用契約の性質

(一)  本件疎明資料によれば、以下の事実を一応認めることができる。

(1) 相手方会社のタクシー運転手の員数は、計六九名であり、そのうち五六名がいわゆる本雇であり、抗告人を含む一三名がいわゆる臨時雇である。

(2) 相手方会社においては、昭和五三年までは本雇の運転手のみであったが、乗客の需要に即応できる雇用体制を整えることを目的とし、また、併せて賃金コストを低く押さえることを狙いとして、本雇の運転手で結成している龍神タクシー労働組合(私鉄総連加盟)と協定のうえ、昭和五四年から、雇用期間は一年、賃金は毎月の売上額の四〇パーセントとする臨時雇運転手を採用することとした。以降、相手方会社における臨時雇運転手の数は逐次増加し、昭和五九年には一三名の限度枠が協定され、平成二年一月当時、前記のとおり、一三名と限度枠一杯の員数の臨時雇運転手が雇用され、稼働していた。

(3) 勤務条件についてみると、本雇運転手のそれは、労働時間が二三〇時間であり、勤務ダイヤ、出勤時間、退社時間等も固定化されているのに対し、臨時雇運転手のそれは、いわゆる自由勤務とされ、勤務時間等について相手方会社から強い拘束を受けることはない建前である(ただし、現実には、相手方会社において、臨時雇運転手の勤務時間や稼働地域が偏らないように指導している。)。

賃金体系についてみると、本雇運転手のそれは、固定給(月額一六万六三〇〇円)、歩合給、超勤手当、勤続給及び家族手当からなるのに対し、臨時雇運転手のそれは、前記のとおり、毎月の売上額の四〇パーセントとオール歩合制であって、年末一時金の支給額が本雇運転手と比べて相当程度低いことや臨時雇運転手には有給休暇制度が認められていないことも併せ考慮すれば、臨時雇運転手の賃金体系は、本雇運転手のそれに比べ明らかに不利なものとなっている。

(4) 臨時雇運転手の雇用期間については、取り交わされる契約書上は一年の期間が定められているものの、昭和五四年の臨時雇運転手制度の導入以降、自己都合による退職者を除いては、例外なく雇用契約が更新(再契約)されてきており、相手方会社において契約の更新を拒絶した事例はない。

また、雇用契約の更新の際には、改めて契約書が取り交わされているが、相手方会社において、必ずしも契約期間満了の都度直ちに新契約締結の手続をとっていたわけでもなく、契約書上の更新(再契約)の日付が数か月も後日にずれ込んだ事例も存在する。

(5) 相手方会社は、右臨時雇運転手制度の導入後においては、本雇運転手に欠員が生じたときは、臨時雇運転手で希望する者の中から適宜の者(五〇歳未満の者で、勤務成績が良好な者等)を本雇運転手に登用してこれを補充してきており、昭和五四年の右制度の導入後において、直接、本雇運転手として相手方会社に雇用された運転手はいない。

(6) 抗告人は、老齢の母と二人暮らしであって、トラックの運転手として稼働していた者であり、相手方会社が田辺市ではしっかりした会社で安定した職場となると考え、相手方会社に知人が勤務していたこともあり、相手方会社のタクシー運転手の募集に応募した。抗告人は、本件雇用契約の折、相手方会社の担当者から契約書のとおり一年限りで辞めてもらう旨の話は聞かされておらず、却って、抗告人と同様に期間一年の契約で稼働している相手方会社の運転手らは自動的に契約を更新されていると聞知していて、抗告人の場合も、当然契約が更新され継続して雇用されるものと思って稼働してきた。

(7) なお、抗告人を含む相手方会社の臨時雇運転手七名は、平成元年一一月二二日、全日本運輸一般労働組合田辺支部龍神タクシー分会を結成し、同分会は、臨時雇運転手の労働条件の改善を求めて、相手方会社に団体交渉を申し入れるに至った。

(二)  右の認定事実及び前示争いがない事実(原決定二枚目表六行目(44頁2段1行目)から裏七行目まで)(44頁2段18行目)によれば、本件雇用契約は、平成元年一月二二日から平成二年一月二〇日までの期間の定めのあるものであって、これを期間の定めのない雇用契約であると認めることはできないが、前(一)認定の相手方会社における臨時雇運転手にかかる労働契約の実態に関する諸般の事情(ことに、(4)、(5)の事実)に照らせば、その雇用期間についての実質は期間の定めのない雇用契約に類似するものであって、抗告人において、右契約期間満了後も相手方会社が抗告人の雇用を継続するものと期待することに合理性を肯認することができるものというべきであり、このような本件雇用契約の実質に鑑みれば、前示の臨時雇運転手制度の趣旨、目的に照らして、従前の取扱いを変更して契約の更新を拒絶することが相当と認められるような特段の事情が存しないかぎり、相手方会社において、期間満了を理由として本件雇用契約の更新を拒絶することは、信義則に照らし許されないものと解するのが相当である。

3  本件更新拒絶の効力

(一)  そこで、本件更新拒絶の効力について判断するに、

(1) 相手方会社は、本件更新拒絶は、相手方会社の経営不振の中での人員削減の方針の下で、たまたま最初に雇用期間が満了する抗告人に対し行ったものであって、合理的な理由がある旨主張するが、本件全疎明資料によるも、前示の臨時雇運転手制度の趣旨、目的に照らし、従前の取扱いを変更して本件雇用契約の更新を拒絶することが相当と認められるほど相手方会社において経営不振に陥り、人員削減の必要に迫られていたものと一応認めるには足りないから、その余の点について判断するまでもなく、右主張は理由がない。

(2) また、相手方会社は、本件更新拒絶は抗告人の勤務成績が不良であることを理由とするものである旨をも主張するが、本件全疎明資料によるも、前示の臨時雇運転手制度の趣旨、目的に照らし、従前の取扱いを変更して本件雇用契約の更新を拒絶することが相当と認められるほど抗告人の勤務成績が不良であったものと一応認めることはできないから、その余の点について判断するまでもなく、右主張は理由がない。

(3) その他、本件において、前示の臨時雇運転手制度の趣旨、目的に照らし、相手方会社において従前の取扱いを変更して本件雇用契約の更新を拒絶することが相当と認められるような特段の事情を一応認めるに足りる疎明はない。

(二)  そうとすれば、本件更新拒絶は、信義則に照らし許されないものというほかはなく、抗告人の就労期間が一年にすぎず過去に契約の更新を受けたことがないとの点は、右の判断を左右するに足るものではない。

したがって、抗告人は、本件雇用契約の更新を受け、その結果、従前と同一の条件により、平成三年一月二〇日までの間、相手方会社の臨時雇運転手の地位にあるべき者ということができる(ただし、もとより、右の更新により、相手方会社と抗告人との雇用契約が期間の定めのないものに転化するものではなく、また、平成三年一月二〇日の期間満了時に当然に再更新がされることになるものでもない。)。

4  抗告人の賃金等

本件更新拒絶前三か月間である平成元年一一月、一二月、平成二年一月における抗告人の月額平均賃金が一八万一九九七円であること、抗告人の賃金が毎月二〇日締め二八日払いであることは、当事者間に争いがない。

5  保全の必要性

本件疎明資料によれば、抗告人は、相手方会社から支払われる賃金を全収入源として生活を保持していることを一応認めることができるから、本件地位保全及び賃金仮払の仮処分にかかる保全の必要性を肯認することができる。

三  結論

以上のとおり、本件仮処分申請は、抗告人と相手方との間において、平成二年一月二一日から平成三年一月二〇日までの間、抗告人が相手方の従業員(臨時雇運転手)たる地位にあることを仮に定めることを求めるとともに、相手方が、抗告人に対し、右の期間にかかる賃金として、平成二年二月から平成三年一月まで毎月二八日限り月額一八万一九九七円を仮に支払うことを求める限度において理由があるからこれらを認容し、その余は理由がないからこれらを却下すべきものである。

よって、これと異なる原決定は右の限度で不当であるがその余は相当であるから、原決定を主文のとおり変更し、申請費用はすべて相手方に負担させることとし、右主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 後藤文彦 裁判官 古川正孝 裁判官 川勝隆之)

平成二年(ラ)第二〇一号仮処分決定抗告事件

準備書面

抗告人 殿水慶太

相手方 龍神タクシー株式会社

一九九〇年六月二〇日

右抗告人代理人

弁護士 良原栄三

弁護士 坂本康文

弁護士 池内清一郎

大阪高等裁判所

第一二民事部 御中

不当労働行為にあたる解雇の効力について

一、原決定は、事実及び理由の第三、二、4において、「雇止めが不当労働行為を構成したり、新契約を締結しないという不作為が権利の濫用に当たるとされる場合がないわけではないが、その場合であっても、損害賠償等の請求をなしうることは格別、申請人と龍神タクシーとの間に新たな雇用契約が締結されたことになるわけではないから、本件のような地位保全、賃金仮払の仮処分申請においては、この点に関する申請人の主張は意味のない主張といわざるをえず、判断の限りでない。」という。

二、しかし、原決定は、法解釈を明らかに誤っている。すなわち、最高裁昭和四三年四月九日判決判例時報五一五号二九頁も「不当労働行為禁止の規定は、憲法二八条に由来し、労働者の団結権・団体行動権を保障するための規定であるから、右法条の趣旨からいって、これに違反する法律行為は、旧法・現行法を通じて当然に無効と解すべきであって、現行法においては、該行為が直ちに処罰の対象とされず、労働委員会による救済命令の制度があるからといって、旧法と異なる解釈をするのは相当ではない。」と判示し、解雇が不当労働行為に該当するときは無効であることを明確に認めているのである。

従って、原決定の右判示は、法解釈を誤ったきわめて杜撰なものであって、到底採用しえないものである。

三、本件において、相手方会社の抗告人に対する解雇または雇止めの意思表示が不当労働行為であることは、抗告人の原審における平成二年三月二四日付準備書面の二、4などで述べたとおりであり、従って、本件解雇または雇止めの意思表示が無効であることは明らかである。

さらに、付け加えれば、相手方会社は抗告人より後にC勤務労働者として採用した熊代進(一九八九年五月採用)、及び渡瀬純(一九八九年七月採用)を、一九九〇年四月二一日付で正社員にしていることが判明した。右両名はいずれも抗告人らで組織する龍神タクシー分会に加入していなかったものである。また、本件につき、抗告人らは相手方会社の松本総務部長と交渉しているときに、抗告人の雇用を一年で切るのならば抗告人の後に一年の雇用期間が終了するC勤務労働者についてはどうするのかと問い質したが、その際、右松本総務部長は「一年たてばやめさせなしゃあないな。」といっていたのである。ところが、きわめて異例なことに、相手方会社は、右両名を正社員(本勤者)としてしまったのである。右両名以外に、C勤務労働者として長年勤務しているものが多数いるし、また、渡瀬純については、採用後、二、三回交通事故を起こしているのに、である。これは、抗告人に対しては、この仮処分事件の関係で、雇用期間を一年と主張しているため、やむをえずとった措置としか考えられない。その意味で、抗告人を解雇あるいは雇止めとしたのは、組合員であるということを理由とするものであったことが一層明確になったというべきであるし、また、契約書上の期間一年という限定が全く意味を持っていないことを如実に示している(期間の定めのない契約なのである。)。

四、よって、相手方会社の主張には全く理由がなく、御庁におかれては、早急に抗告の趣旨記載の裁判を下されたい。

以上

平成二年(ラ)第二〇一号仮処分決定抗告事件

準備書面

抗告人 殿水慶太

相手方 龍神タクシー株式会社

平成二年六月十四日

右抗告人代理人

弁護士 良原栄三

同 坂本康文

同 池内清一郎

大阪高等裁判所

御中

一 原決定には、申請人と相手方会社との間の雇用契約(以下「本件雇用契約」という)の解釈について、雇用契約書に一年の記載があるとの理由により一年の期間の定めのあるものであるとしている。

本件雇用契約は、期間の定めのない契約であることは、原審において詳細に主張立証したとおりであるが、以下補足して主張を準備する。

二 原決定は、全くの形式的な理由にもとづくものであって、労働の実態を無視したものであり、事実誤認により違法なものである。

1 まず、わが国においては、雇用期間については原則として終身雇用制度がとられており、短期間の労働契約は何らかの特別な必要性がある場合など、極めて例外的なものである。

このような労働環境の下において、唯一の商品たる労働力を売る以外に生活の糧を入手できない労働者が、文化的な最低限度の生活を営むためには(憲法二五条)、安定した労働契約の存在が必要不可欠であり、この意味で憲法二七条一項に規定する国民の勤労の権利は、短期の期限付労働契約を設定するに際しては相当の必要性と合理性を要請しているものである。

2 この点に関し、原決定は、「昭和五四年から、乗客の需要に即応できるように、、龍神タクシー労働組合(私鉄総連加盟)の同意の下に臨時雇制度を導入し、」と判示している。

しかし、これについては、原審における準備書面において抗告人が詳細に主張しているとおり、また原審における相手方会社の答弁書においても主張されているとおり、相手方会社と龍神タクシー労働組合(私鉄総連加盟)との間の協定によって創設されたものであり、創設後この制度が固定化し、拡大していること、さらにはこのC勤務労働者の中からのみ正社員を採用していることからも明らかなように、劣悪な労働条件のこの制度を導入することにより正社員の賃金などの労働条件の向上を狙ったものであって、このようなC勤務労働者制度の導入に何らの必要性と合理性を見出せないことは明らかである。

3 さらに、C勤務労働者の労働条件は、賃金体系を別にすれば、乗務車両も割り当てられるなど正社員と変わらず、勤務時間については、正社員よりも長時間働いている状況にある。

しかも、原審において相手方会社も認めているとおりC勤務労働者制度発足後、C勤務労働者については、雇用期間は契約上は一応一年と定められているものの、いずれも更新されており、更新を拒否された事例はなく、自己都合退職を除き全員が継続雇用されている。

また、更新の際に新たな契約書が取り交わされることになっているが、期間の満了と契約更新との間に時間的なずれがあることは、原決定も認めるところであるが、これは正しく便宜的なものであり、相手方会社において期間について関心を払っていなかったことを示している。

4 抗告人がすでに詳細に主張立証してきたように、契約書に署名捺印した当時の状況からすると、抗告人は相手方会社の面接担当者から雇用期間一年との説明を全く受けておらず、かえって正社員から継続雇用され、二、三年後には正社員になれるかもしれないとの言を信じて、給料は安く、仕事がきつくても安定継続した職場を求めて契約書に署名捺印したものである。

5 以上の事実に照らせば本件雇用契約は、期間の定めのない契約と解されるものである。

6 このように、原決定は、労働の実態を無視した事実誤認にもとづくものであり、破棄を免れないものである。

三 次に原決定には、決定に影響を及ぼすことが明らかな判例違背がある。

1 抗告人がすでに詳細を主張してきたように、本件と類似の判例として徳島地判昭和四五年三月三一日、光洋精工解雇事件がある。

2 相手方会社は、原審において抗告人の「期間の定めのない契約」であるとの主張に対し、期間一年について「試用期間というべきもの」との主張をしている。

抗告人は、その主張自体期間一年について重きを置いていないことを自認したものであって、抗告人の主張を裏付けるもの考える。

3 しかし、仮に相手方会社の主張のとおり契約の当初の一年間が「試用期間」であるとしても、本件雇止めは、最高裁第三小法廷平成二年六月五日判決の判旨に反するものであって、解約権の行使に客観的に合理的な理由があり社会通念上相当として是認される場合に該当せず無効なものである。

すなわち、右事件は、一年間の契約期間の常勤講師として採用された者が一年後に更新を拒否されたことを争い、地位確認等を求めた事件であり、原審は、本件雇用契約は、契約期間を一年として成立したものであり、右期間の満了により本件雇用契約は終了したとの判断を下した。

右最高裁判決は、「ところで、使用者が労働者を新規に採用するに当たり、その雇用契約に期間を設けた場合において、その設けた趣旨・目的が労働者の適性を評価・判断するためのものであるときは、右期間の満了により右雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意が当事者間に成立しているなどの特段の事情が認められる場合を除き、右期間は契約の存続期間ではなく、試用期間であると解するのが相当である。」と判示し、さらに試用期間付雇用契約の法的性質については、「試用期間中の労働者が試用期間の付いていない労働者と同じ職場で同じ職務に従事し、使用者の取扱いにも格段変わったところはなく、また、試用期間満了時に再雇用(すなわち本採用)に関する契約書作成の手続が採られていないような場合には、他に特段の事情が認められない限り、これを解約権保留付雇用契約であると解するのが相当である。」とし、続けて「解約権留保付雇用契約における解約権の行使は、解約権留保の趣旨・目的に照らして、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当として是認される場合に許されるものであって、……試用期間付雇用契約が試用期間の満了により終了するためには、本採用の拒否すなわち留保解約権の行使が許される場合でなければならない。」と判示した。

3 ところで、本件の場合、前述のとおり、本件雇用契約書には、期間一年と記載されているが、これは便宜的なものであり、当事者間において一年の期間満了により右雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意が成立したとは到底言えないものである。

また、前述のとおり抗告人の業務内容も全く同じであり、使用者の取扱いにも格段変わったところはない。

さらに、抗告人については、すでに原審において主張立証したとおり勤務成績不良等のような事由もなく、解約権の行使が客観的に合理的な理由があり社会通念上相当として是認されるような事情がなかったことは明らかである。

4 それにもかかわらず、本件雇用契約に付された一年の期間を契約の存続期間であるとし、本件雇用契約は右一年の期間の満了により終了したとの原決定は、雇用契約の期間の性質についての解釈を誤ったものであって、右違法は決定に影響を及ぼすことが明らかである。

四 よって、抗告に理由があることは明らかであるから、速やかに原決定を取消し、抗告の趣旨記載の仮処分命令を下されんことを求める。

以上

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